世田谷女性のクリニックのアスリート外来は、現役の女性パワーリフターでもある産婦人科医(新藤)が診察します。担当医である私自身がアスリートであるからこその視点で、ベストなパフォーマンスにつながるコントロールを提案します。
女性アスリート外来で大切にしたいこと
- 生理に対する不安をなくすこと
生理を止めたい、回数を減らしたい、軽くしたい、生理不順で心配、生理が止まってしまった - ピルをふくめたホルモン剤を安心して使用すること
ホルモン剤で太らないかという心配、むくみが心配、血栓症が心配、ドーピングが心配、筋力や持久力への影響が心配 - 妊娠、更年期による心身の変化を乗り越えながらスポーツを続けること
妊娠、更年期への向き合い方が気になる - オンライン診療に対応し、気軽に受診いただけること
生理に対する不安をなくすために
毎月の生理で悩まされている方
生理をとめてしまいたい
ジェノゲストという生理や排卵を止める黄体ホルモン製剤を処方します。
生理の回数を減らしたい
ヤーズフレックスという連続服用可能なピルを処方します。
生理はある方が安心だけど、軽くしたい
1相性のピルを処方します。
生理不順で心配
3相性のピルを処方します。
生理が止まっている方
食事制限で体重コントロールしている
体重減少性無月経の疑いがあります。利用可能エネルギーを増やす対策からはじめましょう。
標準体重かそれ以上
多くはホルモンバランスの乱れ(多嚢胞性卵巣症候群)が原因です。診察後、ピルを含めたホルモン療法を検討しましょう。
ピルを含めたホルモン剤を安心して使用するために
ホルモン剤で太らないか心配
前もって服用を開始しましょう。(体重増加は内服開始3ヶ月以内に多い)
体重制限のある競技で、体重増加が心配
大会前にホルモン剤の服用終了ができるように調整しましょう。(生理後はむくみも出づらい)
体重の増減がコンディションに影響する競技をしている
ピルより黄体ホルモン製剤ジェノゲストを選択することをおすすめします。(最近は主流になりつつあります)
ホルモン剤のむくみが心配
ピルならばヤーズを使用、ホルモン療法ならば経皮製剤を使用、ジェノゲストならば量を減らすことを検討しましょう。
血栓症が心配
経皮製剤は血栓症を増加させないので、ホルモン療法には経皮製剤を選択しましょう。血栓症が心配な方は、ピルよりジェノゲストを選択することをお勧めしています。
ドーピングへの心配がある
ピル、黄体ホルモン製剤、エストロゲン製剤いずれもドーピング禁止物質に含まれないので安心して利用できます。ドーピングに注意が必要なのは漢方薬ですが、女性アスリート外来では処方しません。
筋力や持久力への影響が心配
いずれにも影響しないので安心して服用できることをお伝えします。
妊娠、更年期による心身の変化を乗り越えながらスポーツを続けるために
女性にとって大きなイベントとなる妊娠、更年期への向き合い方について、経験したからこそできる共感と、専門医としてのアドバイスを提供します。
妊娠を考えている
可能なトレーニングの選択へのアドバイスをいたします。
産後で、トレーニングを再開したい
トレーニング再開時期についてのアドバイスをいたします。
授乳期だが、トレーニングもしたい
トレーニング中の乳房不快感についての対策をお伝えします。
更年期でお困り
適切なタイミングでのホルモン補充療法の選択をお伝えします。メンタルの不調を極力軽く感じるようにすることが大切だと考えております。
女性アスリート外来は、原則オンライン診療です。
黄体ホルモン(ジェノゲスト)vs ピル 私にはどちらが合うの?
ピルが飲めるかどうかのチェックリスト
- 偏頭痛もちである
- 血栓症の心配がある(家族に血栓の病気をした人がいる)
- 潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患がある
- 乳がんの既往がある
- 50歳以上である
該当する | 黄体ホルモン(ジェノゲスト) |
---|---|
該当しない | 中用量ピルor低用量ピル |
目的別 生理移動用の黄体ホルモン製剤の使い方
確実に大会の生理をはずしたい | A 生理を遅らせる(むくみが出やすい 飲み忘れ注意) |
---|---|
ホルモン剤でのむくみやだるさは極力さけたい | B 生理を早める(確実性劣る) |
目的別 ピルの使い方
中容量ピル(プラノバール) | 低容量ピル(マーベロン21) | |
---|---|---|
生理を避けたい大会は1ヶ月以内 | C 生理を遅らせる(確実性高い) | ー |
生理を避けたい大会は1ヶ月以上2ヶ月以内 | 大会前に生理にしたい D 生理を早める(確実性やや劣る) 大会後に生理にしたい C 生理を遅らせる(確実性高い) |
ー |
生理を避けたい大会は2ヶ月以上先 | <飲む期間を短くすませたい> 大会前に生理にしたい D 生理を早める(確実性やや劣る) 大会後に生理にしたい C 生理を遅らせる(確実性高い) |
<飲む期間が長くてもいいのでホルモン量は少なくすませたい> 大会前に生理にしたい E 2、3ヶ月飲み、大会前に生理にする ※大会3か月前にアスリート外来に予約してください。 大会後に生理にしたい F 2、3ヶ月飲み、大会後に生理にする ※大会3か月前にアスリート外来に予約してください。 |
※この表は指で横にスクロールできます。
●絶対にかぶりたくないので、計画的に生理をずらしたい方
低用量ピルの利用(E・F)がおすすめです。大会の3か月前にアスリート外来を予約してください。
●大会で体調をベストな状態にしておきたい方
生理を早める(A・D・E)がおすすめです。大会前に生理を起こしておくように調整しましょう。生理後が精神的にも安定していてパフォーマンスがよいことがわかっています。
●審美スポーツ(ボディメイクやフィギュアスケートなど)でむくみや体重がきになる方
低用量ピルで大会前に生理が終わっているように調整すること(E)がおすすめです。 むくみや体重への影響が抑えられます。
●なるべく薬をのみたくなく自然の生理で様子をみたい方
大会1ヶ月前に生理がきて、次の生理が大会とかぶりそうとわかった時点で、中用量ピルで生理を遅らせましょう(C)
●なるべく薬をのみたくなく自然の生理で様子をみたいけど大会前に生理をおこしておきたい方
大会1ヶ月前に生理がきたらすぐに診察を受けて、中用量ピルで生理を早めましょう(D)
ピルの飲み方についてのよくある質問をまとめました。
どんな時に、どのピルを選ぶ?
血栓症の心配があるので少しでも血栓症リスクの少ないピルを選びたい方
先発品希望(発売当初からの歴史の長い薬) | アンジュ28 |
---|---|
後発品希望(あとから発売されすこし割安) | ラベルフィーユ28 |
もともと生理不順がありホルモンバランスを整えることもピルを飲む目的としたい方
先発品希望(発売当初からの歴史の長い薬) | アンジュ28 |
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後発品希望(あとから発売されすこし割安) | ラベルフィーユ28 |
月経前の不調をとりたい方
先発品希望(発売当初からの歴史の長い薬) | マーベロン28 |
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後発品希望(あとから発売されすこし割安) | ファボワール28 |
生理の量を減らしたい方
先発品希望(発売当初からの歴史の長い薬) | マーベロン28 |
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後発品希望(あとから発売されすこし割安) | ファボワール28 |
担当医 新藤和代について
私は現在日本パワーリフティング協会の推薦を受けて、日本スポーツ協会公認スポーツドクターのライセンス取得に取り組んでいます。認定後は、専門分野である婦人科領域のみらならず、整形外科領域においても女性特有の悩みも含めた、女性アスリートの相談を受けられるよう計画中です。
現役パワーリフター
- 第49回愛知県パワーリフティング選手権大会 M1 47KG級 優勝(197.5kg)
- 第50回東海パワーリフティング選手権大会 ノーギア女子一般 第3位(240kg)
- 全日本パワーリフティング選手権大会 第29回マスターズ・クラシック部門 ノーギア女子47kg級 M1 第2位(240kg)
- 2024 world masters classic Powerlifting Championships 5-13 October 2024 Sun City / South Africa 銅メダル(247.5kg)(動画はこちら)
産婦人科専門医
オンライン診療・対面診療
女性アスリート外来については初診からオンライン診療で対応します。
対面診療拡大!
女性アスリート外来の対面診療枠を拡大します。
拡大理由:どの薬を使うか悩んでいる方が多く、その点の相談をオンライン診療で十分にできるか心配している人が多いため
オンライン診療の患者様は、診療日の前からメールでコンタクトをとり事前相談をすることで十分対応できていますが、患者様の利便性向上のため対面診療を拡大します。
薬処方後の相談はメールで対応するアフターサービスをつけておりますので、再診はオンライン診療を利用する方がほとんどです。
女性アスリート外来 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
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オンライン・対面診療予約枠 10:00~15:00 ※対面診療予約枠は 2024年9月9日(月)~開始 |
― | ○ | ○ 10:00~18:00 |
― | ― | ○ 12:30~18:00 |
○ | ― |
女性アスリート外来のオンライン診療の6つの特徴
1.産婦人科専門医が診察し直接相談にお答えします
2.ビデオ通話での相談・診察・処方が可能です。
3.お薬はご自宅のポストに直接届きます。
4.土曜午後・日曜も診療しています。
5.気になることは専用メールで、先生に直接相談できます。
6.遠方のかたの相談多数。
検査が必要な場合は、当院へお越しいただいても、お近くのかかりつけを受診されても大丈夫です。
是非便利なオンライン診療をご利用ください。
オンライン診療の流れ
予約(保険証、クレジットカードの登録)
こちらの予約サイトからご予約下さい。
予約枠は通常診療と同じ時間帯にてご用意しております。(婦人科は祝日もOKです)
※検査を受けていただく必要がある場合は、当院へお越しいただいても、お近くのかかりつけ医を受診されても問題ありません。
当日予約時間に、オンライン診療専用アプリ(CLINICS)を立ち上げ、接続してお待ちください。
ビデオと音声接続をオンにしてお待ちください。同じ予約枠に複数の患者さんがお待ちですが、接続が確認できている方から診察が開始されます。
アプリ経由で、診察呼び出し通知が入ります。
30分の予約枠の中で、診察の通知が入ります。事前に問診票で状況が十分把握できると、より診療がスムーズにすすみます。
診察
ビデオ通話で診察を行います。万が一インターネットの不調で通信が切れてしまった場合は、すぐにお電話いたしますのでご安心ください。
オンライン診療専用アプリ(CLINICS)のメッセージチャットでの診察も可能です。
決済
予約の際に登録いただいたクレジットカードで決済します。
※診察代・薬剤代などの他に、別途オンラインシステム利用料220円と送料550円が必要です。
お薬のお届け
アプリに登録いただいたご住所宛にお薬を直送します。
ポスト投函なので、受け取りのサインは不要です。
是非便利なオンライン診療をご利用ください。
オンライン診療をフル活用した婦人科診療について
当院では、女性アスリート外来について、以下の理由から積極的にオンライン診療を推奨しています。
- どこからでも診療を受けることができる
- お薬を切らさずに継続することで治療効果が維持される
- 中断・再開を繰り返すことでおきる、治療開始時のマイナートラブルを避ける
- リラックスして診療を受けることで、症状についての疎通がより深まる
必要な検査がある場合は、当院対面診療またはお近くの医療機関で受けていただくようご案内いたします。
料金表
カウンセリング料 | 初回: 2,200円(税込) 2回目以降: 1,650円(税込) |
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近い日程の生理日移動 | 2,200円(税込) |
低容量ピル | 2,200円~2,750円(税込) |
中容量ピル | 2,200円(税込) |
オンラインシステム料 | 220円(税込) |
送料(レターパック) | 550円(税込) |
女性アスリートの健康についての対談
DeNAアスレティックスエリート アドバイザー瀬古 利彦さんと女性アスリートの健康について対談いたしました。
瀬古利彦さんといえば、ご存じの通りボストンマラソンの優勝者です。
新藤先生
本日は、女性の長距離走選手の健康問題についてリアルな現場でのお話をお聞かせください。
早速ですが、質問です。長距離走選手はやせている方が多いですが、やせている方が有利なのでしょうか?
瀬古さん
体重が軽いほうが長距離ランナーに有利であることは間違いありません。勝つために最善を尽くすと、結果的に体重を減らすという方向に行ってしまう現実があります。
そして特に女性は、そのことが疲労骨折につながってしまう方も多くいらっしゃいます。
新藤先生
私もアスリートですので、勝つために最善を尽くすという気持ちは大変共感できます。そのなかで行き過ぎた体重コントロールは無月経につながって、将来困るよと言われても響かないでしょうね。しかし、医師の立場としては、選手の健康が心配です。大腿骨骨折などの疲労骨折は、よほどの骨量低下が起きていると思われます。練習をつづけるためにも骨量維持の観点から無月経へのホルモン療法を提示したいです。
疲労骨折をしないために・・ということからであれば、体重性無月経状態への問題に取り組みやすいだろうと感じます。
ところで、女性の長距離走選手は男性の選手と同じようなトレーニングを行うのですか?
瀬古さん
はい、男性と同じ練習サイクルを組むことが多いと聞いています。
新藤先生
女性は、月経サイクルで好不調がどうしてもでるので、生理周期でトレーニングメニューを変更する選択がないような選手には、ジェノゲストで月経を抑制しておくことや、連続服用のピルが良さそうです。
選手の体重管理について教えてください。
瀬古さん
長距離選手(特に女子選手)は、体重管理のために繰り返し体重測定を行う必要があります。オフ期はあまりなく年間を通して体重管理は必要となります。特に強い選手ほど、チーム側からすると大会に出て結果を出してほしいわけですので、忙しくなってしまいます。
新藤先生
そうなのですね。摂食障害と隣合わせの過酷な環境におかれていると感じます。医師として、体重にばかり注目しない診療を心がけたいです。オフ期がないということは、体重減少性無月経の治療の原則である「体重の回復」というのが現役中は難しいように感じます。タイミングをみてホルモン療法を導入するのが良さそうです。
他に何か、女性の長距離走選手の健康問題として気になることはありますか?
瀬古さん
貧血改善のための注射への負担が問題になっているようです。実際のところ、貧血が改善すると酸素運搬能がよくなり、走りは軽く楽になるのは確かなのですが・・・
新藤先生
鉄剤注射のことですね。注射は、血液の中に直接鉄剤を入れますので、鉄過剰になりやすいという問題があります。肝臓などの臓器に鉄が沈着して障害を引き起こす可能性もあり、また、血液中のリンが減ることで、骨が弱くなり、疲労骨折をしやすくなります。安易な鉄剤注射は医師としてはおすすめめできません。
月経による貧血でしたら、ピルを飲めば生理があってもかなり軽くなりますよ。ジェノゲストは、月経を止めるのでさらに貧血の改善に有効です。貧血の対応という点でしたら、ピルやジェノゲストを選択肢に入れるとよいと思います。
対談を終えての感想
記録をのばすための手段として体重制限が含まれる競技において、どのように女性ホルモンと向き合うべきなのか考えさせられました。根本は記録を伸ばしたいという気持ちなので、それに寄り添っていくことが大切かと思いました。
余談ではありますが、瀬古さんによると「大会の日の朝はパンよりおにぎりがよい」そうです。米飯を主食にしている日本人にはお腹に残る感じ、エネルギーへの転換がわかりやすく、パンよりおにぎり!だそうですよ。私も今度の大会で、朝食や種目間の間食は絶対おにぎりにしようと固く心に決めました(=^ェ^=)
走ることは、認知症予防の効果もあるようなので、更年期を乗り越えて何歳までも走り続ける体と心を保つことも大切と思いました。
(2024年6月19日)