- Q
- 眼瞼下垂症とはなんですか?
- A
-
何らかの原因で眼瞼挙筋(上まぶたを開ける筋肉)の動きがうまく伝わらなくなり、上まぶたが開きづらくなった状態、のことです。外見上は「上まぶたが下がって、瞳孔(黒目)が一部隠れた状態」、となります。
先天性眼瞼下垂症、後天性眼瞼下垂症の二つに分類されます。
①先天性眼瞼下垂症
生まれた時から眼瞼下垂症を認めます。ほとんどは眼瞼挙筋の機能が不十分であることが原因です。②後天性眼瞼下垂症
神経の病気(重症筋無力症や動眼神経麻痺、脳動脈瘤、脳梗塞の後遺症)が原因となることもありますが、眼瞼挙筋とまぶたをつなぐ挙筋腱膜の損傷が原因となる、腱膜性眼瞼下垂症がもっとも多く見られます。具体的には加齢や、長年のコンタクトレンズの装着、花粉症や皮膚炎でまぶたを良くこすることが原因として挙げられます。白内障の手術後に起こることもあります。上まぶたの皮膚が弛むことが原因となる、皮膚性眼瞼下垂症を伴うことも多く見られます。
- Q
- 眼瞼下垂症ではどのような症状が見られますか?
- A
-
ご自身が感じる代表的な自覚症状には以下のようなものがあります。
- まぶたが重い
- 視野が狭くなった
- 目が疲れやすい
- 一重まぶたが二重まぶたに、または二重まぶたが一重まぶたになった
- 以前より目が小さくなった気がする
- おでこのシワが目立つようになった
- コンタクトレンズを長期間(20年以上)使用している
- 花粉症、またはアトピー性皮膚炎がある
- 頭痛や肩こりを感じやすい
- 右目と左目の開き方に差がある
- Q
- どのような検査をしますか?
- A
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代表的な検査は以下の2つです。
A.MRD(margin reflex distance)おでこの力を抜いた状態、で瞳孔(黒目)の中心から上まぶたの縁までの距離を測ります。一般的には3㎜程度以下の場合に眼瞼下垂症である、と診断しますが、この数値には諸説あり、また個人差も大きいです。
目を見開いた時に白目の一部が見える
まぶたが虹彩(日本人では茶色い部分)にかかる
瞳孔の上部が一部隠れる
瞳孔が半分以上隠れる
B.挙筋機能の検査次に、眼瞼挙筋の力がまぶたに伝わっているかどうか検査します。
眉毛の上を押さえて、おでこの筋肉の力を抜いた状態で、目がどのくらい開けられるかを計測します。挙筋機能は、瞳孔が下を向いた状態から上を向いた時に、上まぶたの縁が移動する距離で評価します。10㎜未満の場合、機能が低下している可能性がある、と考えます。
いずれも目の形、大きさ、皮膚の状態などによる個人差が大きいため、診断の際に補助的に使用することが多いです。
- Q
- 眼瞼下垂症の治療法を教えてください。手術以外の治療法はありますか?
- A
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症状が軽度の場合、テープや接着剤で留めて一時的にまぶたを上げることもできます。ドラッグストアで美容目的に二重を作るテープや接着剤を購入してご自身でできる方法ですが、まぶたは皮膚が薄いため、かゆみ、かぶれ等皮膚トラブルを起こす可能性があります。
日常生活に支障を来している場合は、手術療法をお勧めします。
主に以下の方法があります。- 挙筋前転法
後天性の眼瞼下垂症に対して行う代表的な手術です。筋肉の力がうまく上まぶたに伝わるよう、緩んだ挙筋腱膜や眼瞼挙筋を付け直します。 - 筋膜つり上げ術
上まぶたの筋肉の力が弱い、または動きが悪い場合に行う手術です。先天性の眼瞼下垂症や、症状が重度の場合に用いることが多い方法です。おでこの筋肉(前頭筋)を利用して上まぶたを持ち上げます。大腿部から採取した筋膜や、ゴアテックスなどの人工物を用い、前頭筋と眼瞼挙筋をつなぎます。 - 余剰皮膚切除術
眼瞼挙筋の機能には問題がなく、皮膚が余ってかぶさった状態を改善するために行います。二重のラインを切開する場合と、眉毛の下を切開する場合があります。①や②の手術と同時に行うこともあります。
当院では主に①と③の手術を行っています。
- 挙筋前転法
- Q
- 眼瞼下垂症の手術後の経過を教えてください
- A
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手術後の腫れやむくみ・赤み・内出血斑が改善して、通常通りの生活に戻れるまでの期間(ダウンタイム)が生じる手術です。
手術後1~2週間程度はまぶたの腫れ、内出血斑が目立ちます。1日20~30分程度、冷蔵庫で冷やしたガーゼやタオルで上まぶたを冷やすことで、症状が早く改善しやすくなります。縁のある眼鏡や、色付きのメガネの使用も効果的です。
手術後1~2か月経つと大部分の症状は改善しますが、違和感が気にならなくなるまでに半年程度かかる場合もあります。
キズの赤みは3~4カ月で徐々に改善します。手術当日より首から下のシャワー浴が可能です。洗顔および入浴は翌日より可能となります。
- Q
- 眼瞼下垂症の手術後、コンタクトレンズの着用やアイメイクはいつごろからできますか?
- A
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手術後3日目よりコンタクトレンズの着用が可能です。基礎化粧は翌日より、アイメイクは抜糸後より可能となります。
- Q
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眼瞼下垂症の手術は健康保険の適応となりますか?
- A
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眼瞼挙筋の機能に何らかの問題がある場合は、健康保険の適応となります。
- Q
- 眼瞼下垂症は予防することができますか?
- A
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ハードコンタクトレンズを着用している場合は、ソフトコンタクトレンズに変更する、使用時間を短くする、またはコンタクトレンズの使用を中止し、メガネを着用することで、発症時期を遅らせることができる可能性もあります。
花粉症やアトピー性皮膚炎を患っている場合は、適切に飲み薬や塗り薬を使用して、なるべくまぶたを擦らないようにするとよいでしょう。
- Q
- 眼瞼下垂症はマッサージで改善されますか?
- A
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眼瞼挙筋の機能をマッサージにより改善できたという、医学的に根拠のある報告は今のところ存在しません。リラクゼーション目的にマッサージを行う場合も、専門家のアドバイスの下に行うことをお勧めします。
- Q
- 夕方になるとまぶたが下がります。眼瞼下垂症でしょうか?
- A
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1日の中でまぶたの下がり方の変化が激しいようであれば、重症筋無力症の可能性があります。
重症筋無力症は、手足を動かすと筋肉がすぐに疲れて、力が入らなくなる病気です。全身の筋力が弱くなったり、疲れやすくなったりします。女性では30~50代、男性では50~60代で発症することが多く、主な症状の一つに眼瞼下垂症があります。
重症筋無力症が疑われる場合は、まずは脳神経内科を受診することをお勧めしております。